ハサウェイの終戦  【機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ】

V.ハサウェイの戦い

1.マフティー・ナビーユ・エリン

 さてここから物語の核心に入ります。前述してきた反地球連邦組織マフティーのリーダー「マフティー・ナビーユ・エリン」の正体こそが、青年へと成長したハサウェイ・ノアなのです。
 ハサウェイは植物監察官候補生として地球での生活を続ける内に、謎の人物クワック・サルヴァーと出会い、テロ活動に参加する事となりました。

 ストーリー序盤で新型MS「Ξ(クスィー)ガンダム」を入手したハサウェイ。その後、悪法である「連邦政調査権の修正議案」の可決に抗議するため、アデレート(現オーストラリア)で行われる議会の粉砕を告知し、作戦を実行に移します。
 しかし組織としては小規模で、豊富な戦力も有していないマフティー。リーダーであるハサウェイ自らがΞガンダムに搭乗して戦闘の指揮を執るという、極めてリスクの高い作戦に打って出ます。

 果たして作戦の成否は? それについては次の節で。

2.ラストバトル

 戦力不足から、Ξガンダム単機で敵を引き付けるハサウェイ。連邦軍の最新型MS「ペーネロペー」を再三にわたって退けるなど、そのニュータイプ能力も開花していました。

 奇襲攻撃を仕掛けた第一波は、相当の被害を与えた上に閣僚の半数を死に追いやるなど一応の成果を上げました。しかし地上部隊を脱出させるための陽動として、もう一度攻撃を仕掛ける必要があります。
 ところがその第二波の攻撃は、進攻ルートを含めてケネスに見破られていました。ペーネロペーとの一騎打ちを優勢に進めていたハサウェイでしたが、会場周辺に張り巡らされたバリアーに捕まり、高圧電流によってΞガンダムもろとも黒コゲになってしまいます。

 意識不明の重態に陥ったハサウェイは、そのまま逮捕という形で病院に搬送され、彼の戦いはそこで終わりました。

3.動乱始末記

 昏睡状態のまま4日が経過したハサウェイですが、病院側の手厚い看護により、ようやく意識を回復します。連邦軍が怨敵である彼の命を懸命に救ったのは、ハサウェイを戦死ではなく処刑するためです。そう、ハサウェイは殺されるために、その命を救われたのでした。

 ハサウェイの逮捕によりマフティーの動きは鎮静化しましたが、事態が長引くと想定していた連邦軍は、実戦経験に長けたブライト・ノア率いる第十三独立艦隊にもケネス隊の支援を要請していました。
 宇宙から降下してアデレートに到着したブライト。その最初の任務は、一連の騒乱の首謀者マフティー・ナビーユ・エリンの処刑です。
 しかしケネスの配慮により、ブライトにマフティーの正体が明かされる事は無く、宇宙世紀0105年5月1日早朝、ハサウェイの処刑はケネスの指揮の下で粛々と行われました。

 ハサウェイ・ノア、享年25歳。ガンダムシリーズの主人公として、「死亡」という極めて稀な結末を迎えたばかりでなく、銃殺刑に処されたかなり異色のニュータイプ戦士でした。

4.敗れざる魂

クスィー・ガンダム ハサウェイの死によりマフティーの活動もアングラ化して、事件は一応の決着を見ます。こうして初代『機動戦士ガンダム』から続く、ファースト世代最後の物語も幕を閉じました。
 最後に、本作のハイライトとも言える名シーンを紹介して本章を終わりとします。

 マフティー討伐のために地球へ降りたブライトは、夕刻にまだ硝煙の臭い残るアデレート空港を視察します。そこにはバリアーの衝撃によって活動を停止したままのΞガンダムが佇んでいました。

 メカニックマンがブライトに言います。「不穏分子が使うモビルスーツに、ガンダムという名称をつかうなんて、許せないでしょう?」と。
 まさかその機体を息子が操縦していた事など知る由も無いブライト。擱坐したままオーストラリアの紅い夕陽に染まるΞガンダムを見上げながら、感慨深げに語ります。
 「そうでもないさ。歴代のガンダムは、連邦軍にいても、いつも反骨精神をもった者がのっていたな。そして、ガンダムの最後は、いつもこうだ。首がなくなったり、機体が焼かれたり、バラバラになったり……。しかし、反骨精神は、ガンダムがなくなったあとでも、健在だったものだ」