三国の残照 【三国志演義】
T.正史と小説
「三国志」とは西暦180年頃の後漢末期から、魏・呉・蜀の三国の成立を経て、やがて滅亡する280年頃までを描いた物語です。 陳寿が紀伝体で記した歴史書『三国志』が正史とされ、それに『後漢書』や『晋書』の出来事、陳寿が採用しなかった逸話などを盛り込んだのが、小説『三国志演義』です。全120回から成る壮大な叙情詩で、前半の主人公を劉備、後半の主人公を孔明としてストーリーが進行します。 大 ベストセラーとして人々に親しまれているため、この作品で書かれている事が史実であると誤解を与えることも多いようです。しかし中には荒唐無稽な設定も多々あり、七実三虚(※)とも言われていることから、本作は歴史書ではなく、あくまで小説・読み物として捉えるべきです。 この『三国志演義』は日本にも多大な影響を与えており、日本における三国志の代表書・吉川英治版も、本作を下敷きにしています。ちなみに長編漫画として話題に上ることも多い横山光輝版や、「人形劇 三国志」はその吉川版をベースとしています。 しかし後半の主人公たる孔明が死亡すると、物語の中核となるビッグスターが不在になるため、そこで読むのを止めてしまう読者も少なくありません。前述の吉川版でも作者自身「書く気がおきない」と実質物語を打ち切ってしまうなど、孔明死後は余り注目されることがないようです。 実際に孔明死後から、三国滅亡まではかなりの年数とエピソードがあるのですが、肝心の「三国志演義」すらも非常に駆け足の展開となっています。小説という体裁をとる上でも、孔明という巨星の消滅は余りにも大きな痛手でした。 とは言え、孔明の死が描かれるのは第104回であり、まだ残りが16回あります。戦乱の時代に並び立った魏・呉・蜀の行く末は? 果たして三国を統一したのはいかなる国だったのでしょうか? |